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医療業界における法規制改革の影響と今後のビジネスチャンス

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2023.03.27

オンライン診療

DX

国内外の情勢変化のスピードが増す中で、時代に合った規制のあり方を探しながら実現していく必要がある。急速に状況が変化するコロナ禍で、医療業界では状況に合わせた医療提供体制の変革が求められてきた

そこで今回、医療業界で法規制改革によって拡大した3つのビジネス事例を紹介する。
今後のあるべき姿も念頭に置きながら、医療業界の変革による今後の展望もあわせて解説する。

規制改革実施計画とは

規制改革実施計画とは、令和3年6月18日に定められた「経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革を推進すること」を目的とした計画である。

規制改革では、経済成長を阻害する規制・制度の見直し、イノベーションを促す成長加速型の規制・制度への変革が求められる。

近年、国内外の情勢変化がスピードアップする中で、日本が経済成長し豊かで活力ある国であり続けるために重要な要素として、グローバル化やデジタル化への対応が挙げられる
しかし、コロナ禍では、行政・事業活動・教育・医療などさまざまな場面でデジタル化の遅れが明らかになった。

規制改革を行う上ではデジタル化を前提に考えるべきだとし、医療・介護・教育・雇用・行政手続きといった分野でデジタル技術の活用が進み始めている。

今後、目指すべきデジタル時代へ向けて規制・制度を見直すことは、経済成長、国民の生産性・効率性の向上、個のエンパワー実現につながる。

医療分野における6つの実施項目

規制改革実施計画の目的を達成するために、令和3年6月1日に定められた「規制改革推進に関する答申」の中で各分野ごとに取り組む事項を確定し、期限までに着実な実施を図っている。

医療分野では大きく6つの規制改革実施項目が示されている。

  • 医療分野におけるDX化の促進
  • 医薬品・医療機器提供方法の柔軟化・低コスト化
  • 最先端の医療機器の開発・導入の促進
  • 医療・介護分野における生産性向上
  • オンライン診療・オンライン服薬指導の特例措置の恒久化
  • 健康保険証の直接交付

上記項目のうち、医療分野におけるDXの促進、オンライン診療・オンライン服薬指導の特例措置の恒久化、に取り組む事例をそれぞれ1つずつ紹介する。また、何度も法改正が重ねられ、令和4年に経済産業省による補助事業が始まった再生医療の分野についても事例を1つ紹介する。

医療DXによるオンライン資格確認

オンライン資格確認とは、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認を行うことをいう。

オンライン診療・服薬指導の特例措置の恒久化に対する規制改革の1つとして、オンライン資格確認等のシステムを基盤とした電子処方箋システム運用の開始、薬剤配送における品質保持等に係る考え方を明らかにし、一気通貫のオンライン医療の実現に向けて取り組むと規制改革実施計画で明示している

オンライン資格確認を行うためには機器が必要だ。ここでは株式会社アルメックスの製品である「マイナタッチ」について取り上げる。

アルメックスは、さまざまな業種に向けて、業務オペレーションの効率化や利便性の向上が見込まれるサービスを提供している。
その中で、医療機関向けに提供されているサービスのひとつが、オンライン資格確認対応顔認証付きカードリーダー「マイナタッチ」だ。

「マイナタッチ」では、マイナンバーカードの顔写真データを IC チップから読み取り、「顔写真データ」と窓口で撮影した「本人の顔写真」と照合して本人確認を行うことが可能である。最新の保険資格を自動的に医療機関システムで取り込むことができる。さらに、紙の公費医療券をはじめとした各種証明書を読み取ることも可能なため、有人窓口で対応する必要がない。

2023年1月26日より電子処方箋運用が開始、さらに2023年4月1日からオンライン資格確認が原則義務化される予定だ。マイナタッチの需要はますます拡大すると予想される。

医療DX基盤の整備が進むことによって、医療機関と患者双方の医療体験が円滑になることが期待されている。

オンライン診療の拡大

新型コロナウイルス感染症が急激に拡大したことに伴い、医療体制のひっ迫や感染防止の非常時対応として、制度の見直しが行われた。

その中で、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの特例措置として、医師が医学的に可能であると判断した範囲において、初診からオンライン診療の実施が認められた

原則として初診のオンライン診療はかかりつけ医による実施としている。ただし、かかりつけ医以外の医師が対応する場合は、あらかじめこれまでの医療履歴や基礎疾患、現在の状況など患者の状態が把握できているか、医師・患者双方が同意の上で実施する必要がある。

実際にどのようにオンライン診療を行っているのか、ファストドクターの取り組みを紹介する。

ファストドクターは全国の医療機関から構成されている時間外救急の総合窓口(プラットフォーム)だ。夜間・休日の”もう一人のかかりつけ医”、”地域医療者のパートナー”として、医療者の力を効率的に活かし誰もが24時間切れ目のない医療を享受できる社会を目指している。

事業内容は大きく4つある。

救急往診・オンライン診療事業
24時間365日医師の医療相談を受けることができ、症状に応じて救急病院案内や夜間休日往診、オンライン診療などの適切な医療を手配できる体制を整えている

在宅医療支援事業
在宅医療を担う医療機関の安定的な24時間体制を支援するため、夜間休日のオンコールや救急往診、看取りなどを代行している

自治体支援事業
地域医療課題や社会情勢に応じて、救急と連携した救急車の適正利用など地域に応じたさまざまなソリューションを提供している

企業連携・支援
ファストドクターのプラットフォームを活用し、企業と連携することで新しい課題解決・価値提供の創造に取り組んでいる

新型コロナウイルス感染症が拡大する以前より、生活者の不安と医療者の負担をなくすためにオンライン診療に取り組んでいたからこそ、今回の感染拡大に伴うオンライン診療の特例措置にいち早く対応できたといえる。

再生医療事業の推進

再生医療とは、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞や人工的な材料を積極的に利用して、損なわれた機能の再生をはかる方法のことだ。これまで治療法のなかったケガや病気に対して、新しい医療をもたらす可能性がある。
そのため国民の期待が高い一方、新しい医療であることから安全性を確保しつつ迅速に提供する必要がある。

再生医療等の提供または再生医療等で使用する特定細胞加工物の製造を行う場合は、事前申請が必要だ。
規制改革実施計画では、コロナ禍で脆弱性が顕になった「書面・押印・対面」について根本的に見直すこととし、オンライン化をはじめとする手続きの軽減を推進している。
再生医療の申請についても、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に定められた各種手続きに関する申請書等様式のうち、押印を求めているものについては押印欄を削除するように変更されることになった。

細かな規制が多い再生医療だが、第一線でこの事業に取り組むセルソースについて取り上げる。

セルソースは、厚生労働省の許可を得た上で医療機関・研究機関と連携し、誰もが利用できる最先端のプラットフォームを提供している。
人生100年時代と言われる現在、より健康に生きるためには再生医療が鍵を握っているとも考えられる。再生医療は、研究の時代から治療の時代へと移り変わっている中で、セルソースは第一線でさまざまな事業を展開しているのだ。セルソースの決算資料解説もぜひ読んでいただきたい。

主な事業内容は3つあげられる。

再生医療関連事業
脂肪由来幹細胞加工受託サービス
血液由来加工受託サービス
再生医療等法規対応サポートサービス

再生医療センター
「再生医療等安全性確保法」のもと、厚労より特定細胞加工物製造許可を受けて細胞等の加工を行う

コンシューマー事業
再生医療の研究にもとづき開発した、複合成分「Signa-Peptide®(シグナペプチド®)」を配合したエイジング化粧品を展開

自社での申請を行い、幹細胞等の加工を行ったり塀品開発を行ったりといった経験を活かし、再生医療等法規対応サポートも行うことで、さらなる再生医療の発展に貢献していくだろう。

今後の展望

規制改革実施計画では、実施状況に関するフォローアップを定期的に行い、公表すると記されている。令和4年6月7日に閣議決定された規制改革実施計画では、医療・介護・感染症対策についてさまざまな項目でのフォローアップ状況が整理された。医療現場の負担軽減をするための手続きのデジタル化、質の高い医療を支える最先端の医薬品・医療機器の開発促進についても明記されている。

オンライン診療については、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を改訂し、かかりつけの医師やそれ以外の医師が初診から対応可能となるように具体例やセキュリティ面の方策について検討していく。

オンラインでの資格や本人確認の円滑化については、HPKI(保健医療福祉分野の公開基盤)以外の幅広い方法を検討していく。医療現場のデジタル化は医療従事者の負担軽減することに繋がるため、電子署名や押印の可否について整理を行っていく予定だ。

まとめ

今回は、規制改革実施計画のうち医療業界に関する実施項目について取り上げた。
その中でも、コロナ禍で遅れが明らかになったデジタル化という項目について注目して、オンライン診療やオンライン資格確認、手続きの円滑化に関する事業を取り上げて紹介した。

医療業界では大きな変革の時代へと突入している。状況に合わせた定期的な規制の改革が行われることによって、国内外の情勢変化のスピードに遅れることなく、業務の効率化や新しい医療の開発・導入が進んでいくことに期待したい。

参考

「規制改革実施計画」 厚生労働省 令和3年6月18日
https://www.moj.go.jp/content/001363012.pdf

「規制改革実施計画」厚生労働省 令和4年6月7日
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/220607/01_program.pdf

ファストドクター株式会社
https://www.fastdoctor.co.jp

株式会社アルメックス
https://www.almex.jp

セルソース株式会社
https://www.cellsource.co.jp

「再生医療について」再生医療ポータル 
https://saiseiiryo.jp/about/

「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく再生医療等提供計画等の提出等について」厚生労働省 令和5年2月20日
https://www.mhlw.go.jp/content/001060330.pdf

 

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