2023.04.04
さまざまな情報がポータブルで自由に持ち運べる世の中が目前に迫っている。医療業界では、患者に適切な処方をするための情報集めが必要な時代は過去となりつつあり、リアルタイムで情報共有を行う研究が進んでいる。ヒューマンズデータでは、様々な医療情報をブロックチェーンに載せて複数のステークホルダー間で安全に共有する技術を開発している。今後、プロジェクトはどのような発展を見せていくのか。長瀬社長の経歴とともにお伝えする。
【プロフィール】
ヒューマンズデータ株式会社CEO兼CTO。東京理科大学理学部応用数学科卒業。朝日新聞社を経て、1989年株式会社テクノロジックアートを設立。
OSF(OPENSoftware Foundation)のテクニカルコンサルタントとしてDCE(DistributedComputing Environment)関連のオープンシステムの推進を行う。OSF日本ベンダ協議会DCE技術検討委員会の主査を務める。UMLProfile for EDOCの共同提案者、ISO/IECJTC1SC32/WG2元委員、UMLモデリング推進協議会(UMTP)発起人。明星大学情報学部講師。元中国浙江大学客員教授。XP2003国際会議 論文審査委員。アジャイル開発検定コンソーシアム会長。トランスコスモス株式会社技術顧問。ISO TC215/WG11委員。
自分自身で医療データの管理が可能に
ーーヒューマンズデータの事業についてお伺いできますでしょうか?
ブロックチェーンやNFTを使ったサービスを提供しています。
ブロックチェーンとは、データをブロックという単位で管理し、1本の鎖のように全て繋げて管理するデータベース技術の一種です。改ざんすることが非常に困難、障害によって停止する可能性が低いという特徴を持っています。そのブロックチェーンで発行された代替不可能なデジタルデータのことをNFTと呼びます。
今までは医療データに関しては、医療機関が持っていたり健康組合が持っていたりして、本人の意思で管理、活用することができませんでした。
それを医療データを取引可能にする、つまり利活用可能にすることが私たちの目的です。
当社は、医療情報をブロックチェーンに載せてステークホルダー間で共有します。ブロックチェーンを利用することで、信頼性が担保された情報を蓄積します。
そのため、信頼性が高くパーソナライズされたヘルスケアや保険サービスの機会を提供することが可能です。
患者さんが自身のデータの2次利用を製薬会社や保険会社、各種研究機関等に許可し、その2次利用者が情報の利活用を行ったタイミングで、システム利用料として当社の収益になるというビジネスモデルです。
現在注力しているサービスは、医療情報NFTの「MerhdsNFT(マーズネフト)」です。本人の合意のもと、経年の検診データを2次利用者に提供します。未病時の経年という点がポイントです。特に保険の契約時には事務コストがかかります。このコスト面の解決と、健康増進に向けた商品が増える背景をもとに、サービスの拡販が期待できるでしょう。
ーーサービス構築には長瀬社長のバックグラウンドが深く関係していると伺っています。
朝日新聞社の情報システム部門に入社し、ITに関わる仕事を行っていました。
その後、アメリカにてUMLというソフトウェア設計手法を標準化する活動を行いました。そして医療業界でもこの標準化を使ってITシステムを作ろうと考えました。この時点で既にヒューマンズデータのビジョンがあり、より対象領域を具現化するためにキャリアを重ねていきました。そのなかで、医療情報のシステム開発の仕事を一緒にしたこともあり、大学の先輩でもある窪寺と、会社設立のなかで紹介を受けた齋藤とヒューマンズデータを設立しました。
ーー創業者間の役割分担はどのような体制ですか
役割分担は長瀬が技術、窪寺が健診データなどの専門家という役割です。齋藤がマーケティングの専門家として参画し、チームとして走り出しました。
NPO法人との関係を活かして情報利活用の実現へ
ーー事業を進めていく上での課題などはありますか?
情報は本人の同意がないと利活用できないというところですかね。
個人情報との兼ね合いとしてはデータを見られなくすることでセキュリティを担保します。ブロックチェーンの仕様上、データの修正・消去はできないのですが、フラグをたてて見えないようにすることはできるので、ユーザーの意思に合わせて情報を管理することができます。
あとはアクセス権に関しても議論が必要だと感じています。
ーーユーザーにとってのインセンティブ設計が必要だと思うのですが、どのようにお考えですか?
当社は直接ユーザーと関わることは少なく、健保組合などのデータが多い企業と関わったうえでインセンティブを構築していく未来図を描いています。健保組合が情報を利活用してユーザーのメリットになる動きをしてくれるかというところも重要になってくると思います。
ーー革新的な動きをされている御社ですが、ブロックチェーンやNFTの医療業界特有のブロック要素もありますか?
医療DXという分野において、海外と日本では10年以上の差がついていると言われています。海外で最先端の技術がまず使われるのは金融と医療の分野です。日本では医療分野は開発予算があまり取られない傾向があり、金融機関などに優秀なエンジニアが流れてしまいます。海外を見ている医療情報の先生方と肩を並べてプロダクト創出の議論をする開発部隊の成長が大切といえるでしょう。このあたりの熱量の違いは当事者として縮めていきたいと思います。
ーー今後の事業展開のポイントや俯瞰図を教えてください。
健康データで進行した実証実験を経て、医療データをブロックチェーンに入れて取引するという点で、当社は特許を取得しています。競合が同様のビジネスを展開する際は、同社に特許にもとづく購入をしなければいけないという優位性があります。
それに加えて次はしっかりとした医療データで実証実験をしたいと考えています。規模も100以上のユーザーという大きなものを想定しており、政府のサンドボックスにも繋ぎこむことも考えています。
私自身が理事をしていることもあり、今はMeWCA(ミューカ)というNPO法人と密接な関係です。政府へのパイプがあるため、連携しながら進めていきたいですね。
保険会社や製薬会社といった企業とも連携し、実証実験を進めるということも目標にしています。
ーー採用に関して今後の展望はありますか?
顧客や関連企業と折衝ができる、ビジネス開発ができるメンバーを採用する必要があると考えています。
医療情報の知識を持っている人や勉強していきたいという意欲のある方がジョインしてくださると嬉しいです!
ヒューマンズデータ株式会社の長瀬氏に事業内容や今後の展望について伺った。
正確な医療情報はこれからの時代、非常に大切なものとなっていく。サービスの本格運用が開始するのが楽しみだ。
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ヒューマンズデータ株式会社HP