2023.05.31
アシストスーツを製造、販売する株式会社イノフィスはこのほど、働きながら介護をする30代から60代の男女333人の「ビジネスケアラー」を対象にアンケート調査を実施した。アンケート調査では「身体的不安がある」、「眠れない」、「仕事に集中できない」、「離職を検討している」といった声も。介護離職は2010年代以降増加傾向となっており、ビジネスケアラーを雇用している企業には仕事と介護が両立できる対策も求められる。
介護による腰痛の治療費は月8,789円
「介護によって身体へのダメージや負担を感じているか」という質問に対し「感じている」と回答したのは63.4%。中でも多くのビジネスケアラーを悩ませているのが腰痛だ。「介護による身体的不安の内容」を見ると51.7%が腰痛、次いで40.2%が肩こり、24.9%が関節痛となっている。
ビジネスケアラーが抱える腰痛は日常生活や仕事において、大きな支障となる。アンケート調査では腰痛を抱えるビジネスケアラーの82.6%が「何かしらの対応をしている」とし、「ドラッグストアで薬や湿布を購入している(51.7%)」、「サポーターを購入して使用している(32.0%)」、「栄養ドリンクを飲んでいる(29.1%)」、「病院や整骨院に通い、治療を受けている(25.6%)」といったケアが見られた。
これらの身体的負担のケアのために支払っている月の費用は平均で8,789円。介護サービス費用とは別に介護当事者自身のケアにも支払うことになるため、金銭的負担は大きいと言える。
42.2%が睡眠に支障
介護当事者にとっては「睡眠」にも大きな支障が出る。身体的な負担を感じているビジネスケアラーに「日常生活で具体的に支障があるもの」を尋ねた。「料理」、「食事」、「トイレ」、「着替え」、「入浴」など様々だが、「睡眠」は42.2%で最も多くの人が悩んでいる支障だ。
全ビジネスケアラーのうち、介護によって「眠れない」と回答したのは27.9%。また、「仕事のやる気が起きない」、「イライラする」、「不安感がある」といった意見もある。介護による睡眠不足や身体的不安、精神的不安は日常生活だけでなく仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼすことが考えられる。
「離職を検討」は6人に1人
事実、アンケート調査では「身体をケアするために、仕事量をセーブしなければならない」、「思うように体が動かせず、仕事の質が低下した」、「身体がつらく、仕事に集中できない」といった回答が寄せられている。「身体への不安から、昇進や出世をあきらめた」と回答した人も12.8%だった。
中でも企業にとって無視できないのは「身体への不安から、離職を検討している/検討したことがある」だろう。これは16.6%が回答しており、6人に1人のビジネスケアラーが身体的負担を理由に離職を検討していることになる。
「環境や制度が整った会社があれば転職を検討したい」と思っている人の割合は55.5%。一方、介護による身体的・精神的負担について会社に相談している人は約1割しかいない。
9割が福利厚生で介護用品の提供を求めている
ほとんどのビジネスケアラーは、自身が働く企業に対し「仕事と介護の両立をしやすい環境を整えってほしい」、「介護への支援制度を整えてほしい、不十分だと感じる」、「身体的負担があることを理解してほしい」などの要望や不満を持っている。
「会社から福利厚生として介護用品が提供されるのであれば使用したいか」という問いに対して約9割が「使用したい」と答えるのもうなずける。
少子高齢化と共働き世帯の増加。経済産業省は2030年までにビジネスケアラーが約318万人になると算出している。また、ビジネスケアラーの離職や労働生産性の低下に伴う経済損失額は2030年で約9.2兆円にのぼると試算。各企業はビジネスケアラーが抱える“可視化しづらい課題”に対して、早急な対策をしなければならない。