2022.12.08
デリケートゾーンケアブランドを手がけるMellia株式会社のCEO 原 由記氏にインタビュー。新卒で入社したスタートアップで商品企画やPRとして市場を切り拓き、2017年から幼馴染の和田氏と共同CEOとしてMellia株式会社を創業するまでに至った経験や理由について聞いた。
【プロフィール】
化粧品メーカーにて創業期にジョイン、10年間商品企画や広告プロモーション部を統括。その後、女性特有の悩みやホルモンバランスから起こりうるトラブルに着目し、2017年に幼馴染の和田氏とMellia株式会社を設立。女性一人一人に寄り添うデリケートゾーンケアブランド「I’m La Floria(アイム ラフロリア)」の商品開発・コンセプターを務める。
目次
スタートアップでの経験へ
へアケア商材でマーケットを動かす戦略を学ぶ
ーー原さんはどうしてファーストキャリアでスタートアップに入社するという選択をしたのですか?
スタートアップ企業であることにこだわりは特にありませんでしたが、化粧品が好きで、当時愛用していた化粧品を販売していたので、「この会社に入りたい!」と思ったのがきっかけです。
私は学生時代から「好きなものを世の中に出したい」という思いが根底にありました。
自分らしく生きるのが好きなので、仕事でも自分の好きなことを重視して、企業の規模に関わらず自分の好きなプロダクトを扱っている会社に入りました。
ーーそのキャリアの中で得た一番大きな経験はなんですか?
私は最終的には企画とPRの統括を兼任し、在籍した10年間の中では営業、PR、商品企画とすべての部署を経験しました。その中でも一番期間が長いのがプレスPRの部署です。
商品企画をやりながら、ブランディング設計から販売促進までを管轄していました。
10年もいたので数え切れないくらい様々な経験があるのですが、一番大きい経験は「マーケットを動かしたこと」ですね。
2006年〜2008年頃は大手メーカーのシャンプーが並んでいた中で、ベンチャー企業のヘアケア製品がマーケットを動かすという経験から、「ベンチャー企業でも大手の市場に差し込んでマーケットを動かせる自信」は、そのときに身に付いたものだと思います。
ブランド力、戦略、想い、そして、良いものを世の中に広げられるチーム体制の4つが揃えばブランドを成功させられることを、前職で学びました。
現在弊社が掲げている「アジア・日本No1ブランドを目指す」というところも、当時大手メーカーに打ち勝った経験から来ています。
ーーその後起業しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
実は、起業は学生の頃から考えていました。
私の家系は祖父母の代も含めて、家族全員が経営者だったので起業するのは身近な感覚でした。
家族が男女関係なく各々違った事業を立ち上げていたことから将来的には起業することを前々から思い描いていたんです。
デリケートゾーンのケアにフォーカスした理由 前職で気付いた、女性特有の悩みの多さ
ーー前職ではヘアケアやボディケアブランドの開発を経験されていたなかで、デリケートゾーンに着目した理由を教えてください。
前職でチームの統括をしていた際に、女性一人一人が特有の悩みを抱えているなということを改めて感じました。
「生理で体調が悪いので出社できない」「PMS症状(月経前症候群)でイライラしている」など、こちらが気付くこともありますし、相談を受けることもありました。
実際に自分でもデリケートゾーンのケアに違和感があることなども。
ヒアリングを続けたり調べたりしていると、やはり女性特有の悩みはデリケートゾーンや生理周期(女性ホルモンのゆらぎ)に関わることが多いことに気付いたんですね。
そこで、デリケートゾーンのケアをすることで、ストレスが軽減し女性特有の悩みの解決になるのではないか、気持ちがラクになるのではないか、という仮説を考えました。
またある時、ドラッグストアを訪れた際、デリケートゾーンのケアに特化した商品が見当たらない事実にふと気づきました。
ーー当時まで馴染みがなかったデリケートゾーンケアの領域で創業しようと踏み切れたのはなぜですか?
以前からボディケアやヘアケアのような「外見のケア」ではなく、「セルフケア・内面のケア」のアイテムが作れないかな? とも考えていたんです。
前職で美容業界のブランドの動向を見ていた中で、美容業界(外見のケア)では競合が多いしトレンドのサイクルが早くて、ブランドを長期的に確立することに限界があるなと思っていました。
そうなると、外見だけではなくこれからは内面のケア、ウェルネス(よりよく生きようとする生活態度)の分野も注目されるのではないかとなんとなく思っていたんです。それがこれからの時代にも合っていると考えました。
前職で世の中のブランドの移り変わりの様子を間近で体験している中で、結局「その人にとって無くてはならないもの・必要とされているもの」が残るなと肌で感じました。
心に残る製品体験があり、ユーザー自身が「変化した」と実感できればリピーターになりますし、ブランドを使い続けてくれると信じ、デリケートゾーンケアでの起業に踏み切りました。
ーー0からどのように商品の開発を進めていったのですか?
商品の開発に関しては、OEM会社との製品開発各社の強みを熟知していたのでかなり前職のキャリアが生きました。
たとえば、クリームならA社、スプレーならB社、のように各社の特徴を理解していたので、開発が進みやすかったです。商品によってOEMを変えていることは弊社の強みだと思っています。
ーーデリケートゾーンやフェムテックという領域において、必要性を肌で感じていたとは思うのですが、市場規模など客観的な指標の裏付けもあったのでしょうか?
「デリケートゾーンのケアをしたことがありますか?」という調査では、アメリカでは80%以上はしたことあり、逆に日本では80%したことがないという結果がありました。このことから、「日本は遅れている」との結論に至りました。
欧米では当たり前のように母親が子どもにデリケートゾーンのケアを教える文化がある反面、日本ではあまり意識されておらず、このような文化は未成熟であると感じています。
そのため、弊社ではHPに掲げている「もっと自由に、一人一人が自分らしく輝ける毎日を」という言葉通り、文化・カルチャーを作っていくことを目指しています。
ーー海外と比較して日本でデリケートゾーンケアが浸透しにくい理由はなんでしょうか?
まだ日本ではデリケートゾーンのケアについては触れづらい話題とされているのだと予想します。現在は当時よりはまだ良くなったと思いますが、創業当時はまだ抵抗が強かったと感じています。
国内でも検索で上がってきていることや、欧米ですでに当たり前の文化となっていることもあり、日本でもデリケートゾーンケアの認知や理解がもっと早く進むと思ったのですが、想像より進みが遅く、苦労しているところです。
我々ベンチャーだけが声を上げていても、なかなか根付いていない文化は変えられないので、世の中の意識を上げ、男性も理解して話せる状況になるだとか、当たり前のこととして話題に上がるのが必要だと思います。
そんな中、近年ブレイクスルーのきっかけのひとつになったのが、UNIQLOさんが「吸水サニタリーショーツ」を出したことですね。これで光が差して一気に時代が変わったなと感じます。
みんなが当たり前のように吸水ショーツを買うようになりますし、フェムテックイベントなども開催されるようになりました。
「マーケットを変えるには大手の力も必要」と、ビジネスを進めながら常々思っていることですね。
幼馴染との共同創業 経営における役割分担
ーー共同創業者の原さんと和田さんは徳島出身の幼馴染とのことですが、どのように役割分担をしているのでしょうか?
もちろん情報は共有しながらですが、今までの経験や専門性を活かし私は商品企画とPRで、和田は営業と資金調達と完全に役割を分けています。
得意分野をそれぞれ生かして分担している形です。
ーーお二人は「共同創業者でダブルCEO」という関係でインパクトがありますが、周囲からの反響はありましたか?
創業時は私たち代表が営業していくにあたって注目を集めたり、それをきっかけにプロダクトのファンになっていただけることはありました。
しかし、数年前にリブランディングしプロダクトを全面に押し出す形に変えました。
どうしてもプロダクトではなく人に注目されると、人にファンが着くようになってしまいプロダクトが成長しにくくなってしまうので、現在はプロダクトを主軸としたブランディングを行っています。
ーー共同CEOということで、お互いに意見がぶつかり合うことはありませんでしたか?
まったく無いです!(即答)
続いて、Mellia株式会社の事業成長や資金調達についてさらに話を聞いていきます。
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