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ヘルスケア業界で押さえるべき行政支援策とは

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2022.12.10

資金調達

行政 / 自治体

高齢化社会に伴い、社会保障、医療に関わる財政の負担が増大しているため、政府はヘルスケア産業の活用を通じて健康寿命を伸ばし新産業の創出を目指している。

今回は、ヘルスケア事業確立のための主な取り組みとして挙げているヘルスケアサービス実証事業への補助金、PFS/SIBの促進、InnoHub の活用について紹介する。

これらの支援事業を活用することで事業資金の確保やアドバイザーとの連携ができ、事業の拡大に活かせる可能性がある。

増え続ける社会保障給付費の改善へ

経済産業省は健康寿命の延伸と新産業の創出を目的として、ヘルスケア事業確立のための様々な支援を発表している。

これらの支援の背景となっているのが、高齢者社会の進展とともに年々増加している医療給付費だ。

医療に年金、介護などを含めた社会給付費の中で医療給付費は約45%(2016年時点)を占めており、今後も高齢化に伴って増大していくことが推測される。

医療給付費は65歳以降から急速に増加する傾向にあり、日本で健康寿命と平均寿命に10年の差があることが給付費増大の一因となっている。

そのため、政府は「公的保険外の予防・健康管理サービスの活用を通じて、生活習慣の改善や受診勧奨等を促すことにより、『国民の健康寿命の延伸』と『新産業の創出』を同時に達成し、『あるべき医療費・介護費の実現』につなげる」ことをコンセプトとしたこれから紹介する支援策を打ち出している。

ヘルスケアサービス実証事業への補助金

政府は、令和2年より生活習慣病の予防や地方公共団体と連携した実証事業に関わる費用補助を行っている。

令和4年度では、健康経営やPHR活用、地域における健康課題のテーマに即した事業が募集された。(※令和4年度の公募はすでに終了)

上記テーマを満たし採用された事業に対しては、実証事業では最大1000万円、事業可能性調査で最大500万円の費用補助が行われる。(但し、補助対象経費の1/2以内に限る)

実証事業では4件程度、事業可能性調査では3件程度の採択が予定されている。

応募した場合には、5月ごろに今後の事業計画などをまとめて応募し、書類審査やヒアリングを経て7月ごろに採択される。

評価は事業計画のビジネスモデルやサービスを実施することによって得られる効果を具体的に示すKPIを中心に精査される。

令和5年度も実施される場合には、4~5月頃に発表されることが予想される。

ヘルスケアサービス社会実装事業費補助金の募集要項
※参照: 「経済産業省におけるヘルスケア産業施策について」(2021/12/14)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/chiiki_houkatsu/000234239.pdf

ヘルスケア分野でのPFS/SIBの促進

成果連動型民間委託契約(PFS)とは行政サービスの民間業務委託の一種で、成果に応じて最終的な委託料が決まる。一方SIB (Social Impact Bond) は、民間からの外部資金調達を伴う成果連動型民間委託契約を指す。(「社会変革推進財団 公式HP」参照)

また、経済産業省ではヘルスケア分野におけるPFS/SIB を加速させる以下3つの施策を実施している。

①案件形成支援を通じたモデル事業の創出

意欲のある自治体に対し、ヘルスケア分野でのSIB導入案件組成の支援を平成28年度から開始している。

②事業実施のためのエビデンス整備や手引きの作成

SIB事業の総括レポートの作成や医療・健康及び介護における分野別手引きの作成を行っている。

③セミナー開催等を通じた普及啓発

各地域の経済産業局において、PFS/SIB活用セミナー・個別相談会等を開催している。

徳島県美馬市では、実際にPFS/SIBが活用され、3840万円規模のプログラムが実施されている。

このプログラムでは、運動機能改善や運動習慣の定着を図り、将来的な介護費の適正化につなげることを目的として20歳以上の市民に対してプロスポーツクラブと連携した健康増進プログラムを提供。

運動習慣の改善度などが成果指標とされ、5年間運用される予定だ。

徳島県美馬市での事業実施体制
※参照: 「成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)医療・健康及び介護分野の手引き」経済産業省(2021/9)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/7.PFSiryokenkooyobikaigobunnyanotebiki.pdf

ヘルスケア分野のベンチャー企業相談窓口「InnoHub」の運営

経済産業省はヘルスケアやライフサイエンスに関わるベンチャー企業向けの相談窓口として「Helthcare Innovation Hub(通称:InnoHub)」というサービスを運営している。

InnoHubでは、ビジネスモデルや海外進出、資金調達などの幅広い相談に対応。官民ファンドや民間VCを巻き込み、アドバイザーやVCの紹介なども含めワンストップで相談や支援を受けることができる。

InnoHubでは政府のベンチャー支援施策情報や相談内容を集約しているため、直接の相談だけではなく情報収集の手段としても活用可能だ。

InnoHubの運営体制
※参照: InnoHubサイトページ

行政によるヘルスケアビジネス確立への支援によって何が変わるのか

今回は、経済産業省が実施する3つのヘルスケアビジネス確立支援事業を紹介した。

  1. ヘルスケアサービス実証事業への補助金
  2. ヘルスケア分野でのPFS/SIBの促進
  3. ヘルスケア分野のベンチャー企業相談窓口「InnoHub」の運営

1つ目と2つめの事業では、補助金やPFS,SIB を活用して事業の資金を調達できる可能性がある。

ただ、いずれも支援を受けるためには公募の条件を満たす必要があるため、最新情報をよく確認した上で検討すべきだ。

3つ目のInnohubでは、事業に関して幅広い相談ができるほか、VCやアドバイザーとのつながりを作ることができる。

これらの他にも、行政では新規産業の確立のための様々な施策を行っている。

ヘルスケア事業を立ち上げる場合には、事業に合った行政の支援施策を探して活用することも有用な方法だろう。

参照資料

「経済産業省における ヘルスケア産業施策について」四国経済産業局 新事業推進課(2021/12/14)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/chiiki_houkatsu/000234239.pdf

「経済産業省における ヘルスケア産業施策について」経済産業省(2017)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/01metihealthcarepolicy.pdf

「InnoHub公式ページ」
https://healthcare-innohub.go.jp/groupe-overview/

「成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)医療・健康及び介護分野の手引き」経済産業省(2021/9)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/7.PFSiryokenkooyobikaigobunnyanotebiki.pdf

 

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